巫女バイトをやってみた~年末年始までの準備~

巫女さん

年末年始の巫女バイトについて。第2弾です。(第1弾はこちら

 

今回のテーマは、巫女として実際に働いてみてどうだったのか? どんな実務があったのか? などなど。
長くなってしまいそうなので、まず「年末年始に入る前の準備期間」に関して書きます。

割りと泥臭い内容というか、所帯染みた愚痴まで書いてしまってるかもしれないので、信心深い方や神社の印象を損なわれたくない方は閲覧注意です。

 

年末年始に入る前の準備期間

 

・お祓い? 神様へのご挨拶的な儀式

 

初日は助勤(巫女バイト)として勤務に入る前に、お祓いの儀式がありました。

神主さんの進行の下、拝殿内での厳かな執り行いです。

 

この辺はまあ……「拝殿に入る前に靴を脱ぐ」程度の常識があれば、特に問題なさそうでした。問題なさそうだったんですが、問題以外の出来事がありました。

 

いきなり余談に入りますが、私は別の仕事との兼ね合いの関係で、他の巫女バイトさん達よりも数日遅れての初出勤日となっていました。

そんな訳で、お祓いを受ける私が1人、神主さんが1人という、個人指導塾もビックリのマンツーマン儀式状態になってしまったんですけど。

 

私はこれまでの生涯で、参拝者としてお賽銭のひとつもしたことがなければ、拝殿でのご祈祷とかを神社に依頼したこともなかったので、いざその場に行ったら、どう振舞うのかまったくわからなかったんですよね。

で、拝殿内で神主さんが「お掛けください」なんて言うもんだから、首をかしげました。

 

はあ、どう座るの?

この宗派の神様って足向けて座っていいんだっけ? とか考えてしまいまして。

出てきた言葉が「どっち向きですか? こっちですか?」でした。

 

普通に神様の方に足を向ける形で、椅子に座ってよかったらしいです。

へえ、そうなんだ、と思いましたが、魔女裁判だったら2秒で死んでましたね。

何かもう、神主さんの烏帽子の下のご尊顔が「えっ、こいつマジかよ」みたいなリアクションをしてた気がしましたが、直視すると笑いそうだったので、見なかったことにしました。

 

・お守り、御札、パンフレットなどの作成

 

お祓いと神様へのご挨拶的な儀式を終えたら、年末年始当日に初詣へいらっしゃる参拝者用に、必要なものを作ります。

手作業で作ります。作るというか、材料を詰めます。

 

いや、待てよ、お前等まさか今日雇われたばっかりのバイト(私)が何となく作った物を、参拝者に売り捌くつもりなのか? とかいう下衆い発想に至ってしまいましたが、とにかく作ったのです。作っちゃったものはしょうがないんです。

 

もう少し具体的に描くと、神主がお祓いをした砂、炭(だったかな?)、綿など、決められた材料を決められた順番に、巾着袋へ詰め込みます。

ご利益や使い方などがプリントされた紙と一緒に、専用の透明袋に1つずつ入れ、綺麗に封をします。これを数百、数千セットと必要数まで作っていく作業です。

他の巫女バイトさん達や、たまに茶々を入れてくる神主さんときゃっきゃうふふしながら、ポコポコ詰め込んで、あれよあれよと言う内に作られていくお守りの山。

 

きっと日本のどこかで、私が作ったお守りを持ってた方もいらっしゃるとは思うのですが、御利益はあります。きっとあります。

まあ、猫用トイレの砂とか入れてた訳じゃないので、大丈夫です。

 

良く言って内職的というか、工場ラインのバイトさながらの仕事内容だったので「こんなんでいいんかい」と思わないでもなかったですが、それはそれで新鮮な体験でしたね。

他にも、神主さんや宮司の奥様が墨書きした御札の装飾を、見目が良いように微妙にずらしたり、奉納品の袋詰めをしたり、境内のロッカーに運び入れたりと雑用をしていました。

ちなみに、この間はただの下準備なので、巫女装束は着ません。

出勤時に着用してきた私服の上に、神社スタッフ用の割烹着を着て、作業をしていました。

 

巫女装束の着用方法の指導

 

「巫女装束の着方を教えます!」ということで、忙しそうにドタバタやってきた先輩職員に連れられて、事務的なロッカーが立ち並ぶ更衣室へ。

教わった手順とか雰囲気は下記の通りです。

 

①白足袋を履く

諸々サイズが用意してあり「自分に合うものを探して、当日まで忘れずにいてくれ」という感じでした。

年末年始の本番はとにかく忙しく、他の職員がまったく手を貸せないことが多いので、着替え直前にチェックせずに自分の分は前もってちゃんと確保しておいた方がいい、との説明が。

そして、12月末~1月は凍える寒さです。

白足袋の中が生足だと、シンプルに死にます。

寿命を縮めないために、五本指ソックスなどを履くことをおすすめされました。(足袋は親指部分が分かれているため、普通の靴下は履けない)

というか、外から見えさえしなければ何でもいい、とのことだったので。

・五本指ソックス

・肌色のストッキング(爪先部分を切ったもの)

・インソール(足袋に合うように、親指部分に切り込みを入れたもの)

最終的には上記を用意して、履いていました。足袋用の防寒グッズとか探せばあったのかもしれませんが、用意するのが面倒だったんですよね。

 

②襦袢を着る

襦袢の前開きは自分から見て右側が下、左側が上に重なるように。

これは巫女装束に限らず和服の基本ですが、左前に着ると死装束になるためです。せっかくお手製の防寒グッズで死を先送りにしたんですから、自ら死装束をキメることはありません。

いや、個人的には年末年始シーズンにうきうきしてる連中なんて、死装束でお祓いするくらいがちょうどいい気がしますけどね。

話を戻します。

当然のことながら、和服にボタンとかはないため、長い腰紐で襦袢を止めます。

腰紐を2つ折りにして、お腹から背中側へ。背中側で固結びをしてから、再びお腹側へ回し、固結びした上でリボン結び。

このときに、きっちり結んで止めないと襦袢がよれてきます。重ね着になるので、後から中側を直すのは一苦労です。とにかくガッツリ止めます。

 

ちなみに、普通に肌着は中に着ますし、下着も着用した上で襦袢を着ます。和服用の下着云々とかは特になかったです。

・一般的な下着

・ヒートテック

・薄手セーター

・洋服(肌色っぽい透けない色)

などなど。私はこれらを着込んでから、襦袢を着ていました。

要は外から見えたり、透けたりしなけりゃいいんです。バレないことが重要なんです。麻薬の密輸と一緒ですね。(※冗談です)

 

まあ、足袋から襦袢まで仕込みに仕込んでも、コートを着られる訳ではないので寒いもんは寒いです。

詰め所はともかくとして、拝殿内には昔ながらのヒーターがひとつだけ。エアコンがある訳でもないし、言わずもがなの木造建築です。鉄筋コンクリート建築みたいな気密性もなければ、保温性だってありません。

「おしゃれは我慢」とは良く言ったものですね。(おしゃれなのか?)

神社業界はユニクロらへんとコラボして、神職の正装をウルトラライトダウンとかにした方がいいんじゃないでしょうか。もうヒートテックの全身タイツとかにしとけよ。

 

③白衣を着る

白衣といっても、もちろん、医者や科学者が羽織ってるようなあれではないです。

白衣の前にある合わせは、左右で両側を揃えます。背中の折線がまっすぐになるように、シワができないように、姿見の鏡を見ながら調節。

色々と調節できたら、これを白帯で止めます。

私が助勤した神社では「マジック白帯」が常用されていました。ゴムのように伸縮性のある素材で、マジックテープで止められるお手頃タイプです。

和服だからボタンはないけど、マジックテープはあるんです。

きっと宗教やご利益だって魔法みたいなものなので、マジックテープはノーカンなんだと思います。何のカウントかは知りません。

とにかく、これで腹部を止め終わったら、脇から手を入れて白衣のシワをしっかり伸ばします。きりっとした装束姿にするには、シワとよれは厳禁です。

 

④緋袴を履く

正直、これは字で書いてもピンと来ないと思いますが、一応は全文載せます。

緋袴はぱっと見だと前後がわかりづらいですが、ヘラの付いている方が後ろ側。マジックテープの帯を隠すように、上から重ねる。帯を背中側で一旦クロスさせ、お腹側へ。腹部の位置で再びクロスさせる。

腹部のクロスは、襦袢と同じく右側が下、左側が上になるように。その状態で、帯を上下半分で下から上にぐっと折り返したら、キープしたまま背中側で蝶結び。

続いて、緋袴の後ろ側に付いたヘラを、背中側の蝶々結びの下に隠れたマジックテープ帯へ差し込む。

後ろ側に付いた結んでいない帯を、お腹側へ持ってきてクロスさせる。

最後、二つ折りにした帯を腹部で蝶々結びに。緋袴の破線が見えるように、結び目を下げるなどして調節する。

 

何言ってるかわからないと思いますが、巫女装束の詳しい着方はこちらに載っています。

実際に教わった内容とほとんど同じだったので、どうやって着用しているのか、巫女装束の構造はどうなっているのか、気になる方はリンク先を読んでみてください。

そっちの方が写真付きでわかりやすいです。ここまで頑張って読んじゃった方の苦労は報われません。

 

さて、そんな感じで実際の巫女装束を使って、着用方法を口頭で説明されました。

神社の体制にもよるのかもしれませんが、全体的にマニュアルらしいマニュアルがありませんでした。神職の人達が境内の仕事で忙しい合間を縫ってご教授くださったため、付け焼き刃感がすごかったですね。

習うより慣れろ。そこそこの体育会系です。

「ゆっくり質問できるのは今だけかも」ということだったので、私は万一のために、先輩職員の説明をスマホのボイスレコーダーで録音しておきました。

 

ご祈祷の練習

 

着替えについて長々と書きましたが、これが1番の肝でした。

だがしかしです。年末年始の職務の中で最も人目につく重要な務めであるはずのこの儀式、さらっとした触り程度しか練習ができませんでした。

初めは、神主さんが実際の儀式形式に沿って教えていましたが「後はよろしく!」とのことで、途中からは去年も年末年始に働いたという巫女さんの指導に。

 

私の初出勤日が遅れ気味だった影響もありますが、なんと研修日は2日のみ。

しかも、2日あった内のわずか1、2時間。

その間に、大勢が集まる儀式の進行役を担うべく、細かな所作とタイミング、小難しい文言の全てを叩き込まなくてはいけませんでした。とても正気とは思えない。

 

その上、渡された資料は、明らかに説明の足らないペラ1枚です。

適当に砂詰めたお守りの方が、まだ分厚かったですね。

毎年担当されている巫女さんからしても「今年の助勤さん、時間なさすぎるよね」「去年は儀式まで担当させなかったのに、大丈夫なのかな」とのことで、結構なハードスケジュールだったようで。

多分、私がお勤めした神社は神職の全員が妖怪に憑かれていたんだと思います。

 

妖怪の所為なら仕方ない。

ウォッチッチとか言ってる場合じゃねえぞ(古典的なネタ)ということで、私は所作から細かい台詞回しまで全て文字に起こして、資料を新たに作り直した上で覚え込みました。

他の助勤さん達も、あまりにも短い練習日で 神主等の正気を疑っていたため 「怖い、胃が痛い。家に帰りたい」とか言い出していたので、資料を共有してどうにか本番日をやり過ごしましたが。

あのブラック企業ばりのスケジュール管理は何だったんだろう、という思いです。

そして「さあ、次はもう本番日だよ」「ちゃんとできるかな? おひょひょ」などと巫女達にナメた口を利いていた神主は何だったんだろう、という気持ちです。

真の妖怪は人間です。

 

その他の雑務

 

男性の湯呑みが空いてたら女性が積極的に淹れること、机に食器が残ってたら進んで片付けて洗うこと、などなど神社内の暗黙の了解(?)についての説明がなされました。

正直、こういった雑務に関する説明の方が懇切丁寧でしたし、労力を割いている印象を受けました。

そんなこと教えてる暇があったら、儀式の手順とか模擬演習に時間を使った方がよかったんじゃなかろうか。

 

おしまい

 

後半からほとんど愚痴になってましたが、実際に働いた職場を包み隠さず書きました。

もちろん、全国にある全ての神社が妖怪スケジュールをぶち込んでくる訳ではないはずですが、今後の生涯で巫女バイトをやる予定のある方は、ある程度の無茶振りも想定しておいた方が、心構えとしてはいいかもしれません。

とはいえ、大真面目に儀式の手順なんか練習する機会は、普通に生きてたらそうそうあるものではないですよね。

ご興味のある方は、体験してみることをおすすめします。

次回は、いよいよ「年末年始本番のお仕事内容」についてです。

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